異なる種類の翻訳で同じ翻訳メモリを使いまわすのは危険
今回は翻訳支援ツールの翻訳メモリについての話です。
(顧客から提供されたメモリではなくて自分で作った自分用の翻訳メモリ)
普通は、翻訳メモリは一つ作ったら増やさずにそれだけを使い続ける方が管理は楽です。
しかし、複数の種類の翻訳をする場合は、翻訳メモリはそれぞれ分けた方がいいかもしれません。
その理由を説明します。
異なる種類の翻訳で同じ翻訳メモリを使いまわすのは危険
先に私が経験してきた翻訳の仕事について簡単に書きます。(NDAに抵触しない範囲です)
元々は特許翻訳から始めたのですが、IT翻訳も並行して始め、その後、IT翻訳というよりは産業翻訳に近い大きなプロジェクトを始めました。
特許翻訳(校正)でも引き続き稼いでいますが、既に産業翻訳の収入の方が多くなっています。
シリーズ物の教材を訳しているので先は長く、安定して稼げています。
教材の翻訳の方が圧倒的に面白いので、特許翻訳の仕事は最近は減らすようにしています。
慣れてきて余裕が出てきたので、ゲーム翻訳も始めることにしました。
蓋を開けてみたらゲーム翻訳の中に字幕翻訳もあることが分かったので、字幕翻訳の勉強を始めたところです。
翻訳の種類によってルールが異なる
以下、特許翻訳と、IT翻訳と、字幕翻訳の、顕著な特徴をごく一部紹介します。
結論としては、これら基本的な特徴というかルールが異なるので、翻訳メモリは別に分けた方がいいかもしれません。
特許翻訳の場合
特許翻訳では、ほぼ例外なく、スペースも英数字もすべて全角を使います。
(URLなどは半角にすることもあります)
その代わり、数字の前後や、アルファベットの前後にスペースは要りません。
IT翻訳の場合
IT翻訳(および多くの産業翻訳)では、スペースは通常半角スペースを使い、英数字もすべて半角です。
そして数字の前後や、アルファベットの前後に半角スペースを1つ入れます。
英数字が半角であるため、全角文字(つまり日本語の文字)との境に半角スペースを入れることで読みやすくします。
例外もあってルールは複雑ですが、Microsoft社などがガイドラインを提供しているのでそれに従うのが一般的です。
字幕翻訳の場合
字幕翻訳は、句読点は使用しないのが基本のようです。
理由の一つは、少しでも文字数を減らすためかと思います。
字幕は長すぎると読み終わる前に次のセリフに移って消えてしまうので、省略してでもとにかく短くすることが重要です。
PCTの特許翻訳みたいな mirror translation に慣れていると、事情が全く異なる字幕翻訳は最初は戸惑います。
まとめ
基本ルールが異なる翻訳を複数、受け持つ場合は、翻訳メモリを分けた方が良い、という話でした。
一つの翻訳メモリですべて済ませようとすると、ミスが発生しやすくなります。
高マッチ率でヒットした場合にせよ、翻訳メモリ内の検索でヒットした場合にせよ、別の種類の翻訳で登録した文を挿入してしまうと、全角/半角、スペース、句読点周りでルール違反をしてしまう可能性が高まります。
この辺りのエラーを、納品前のQA(セルフチェック)で確実に見つけて対処できるようになっているのであれば、翻訳メモリは分けなくても良いかもしれません。
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