Tradosの翻訳メモリ増強方法

翻訳者にとって辞書ブラウザの次くらいに重要なソフトウェアは翻訳支援ツールでしょう。

用語集と、翻訳メモリ(TM=Translation Memory)という2つのデータベースを保存して使うためのツールです。

用語集も翻訳メモリも、基本的には自分で作成して増やして貯めていくことで、以後の翻訳作業がどんどん楽になってスピードが速くなり、つまりより稼げるようになっていきます。

また、用語などの統一を図るために翻訳会社から翻訳メモリが提供されて、それを使用することが求められることもあります。

一般に一番広く使われている翻訳支援ツールはSDL社のTrados Studio(以下Trados)です。

最新版は2019ですが、より安定したバージョンを使った方がよいので、私はTrados 2017を使用しています。
(2019への無料アップグレードができるというキャンペーン時に購入したので、いずれは、だいぶ先の話になると思いますが2019にアップグレードする予定です)

用語集の基本

Tradosをインストールすると、Trados Studio本体とは別に関連ソフトがいくつかインストールされまして、その1つがMultiTermです。

用語集はこのMultiTermで管理します。

用語の検索、追加、削除などをMultiTermで行います。

用語ペアを1個ずつ行うのであればMultiTerm上で行えばいいのですが、Excelに保存しておいた用語ペア一覧を一括で既存の用語集データに追加する方法もあります。

この方法は長くなるのでまた後日書く予定です。

尚、用語集に関しては、『英->日』と『日->英』それぞれで、別々に作成する必要はありません。

英日翻訳、日英翻訳の両方で、同じ用語集が使用できます。

翻訳メモリの基本

一方で翻訳メモリですが、こちらは、『英->日』と『日->英』それぞれで、別々に作成する必要があります。

英日翻訳の時は『英->日』の翻訳メモリを選択し、日英翻訳の時は『日->英』の翻訳メモリを選択します。

特許翻訳をする際は、各国の特許庁などの公式サイトで特許明細書が公開されているので、それぞれの言語の特許明細書から対応する分節を頂戴し、翻訳メモリに登録することも可能です。
ただし、公開特許の訳が間違っていることもよくあるので、よく吟味して必要に応じて自分で修正してから登録します。

これを繰り返すことで、時間はかかりますが翻訳メモリはどんどん増強されていきます。

それで、翻訳メモリに、個別に用意したファイルから対訳を追加していく方法として、『文書の整合』という機能がありますが、これは原文ファイルと訳文ファイル、別々のファイルから読み込む方法で、対応関係が誤って判定されることがよくあるようなので止めた方がいいように思います。

ExcelのA列に原文、B列に訳文といった形で対訳を記録していき、ある程度たまったら複数行の対訳を一気に翻訳メモリに追加する方が確実です。

その方法は、下のSDL社の公式ページで説明されています。

Excelを翻訳メモリに変換する方法(Trados Studio 2015以降)=>現在はリンク切れ

前述したように『英->日』の翻訳メモリと、日英翻訳の時の『日->英』の翻訳メモリは別なので、この作業は2回行うことになります。

上のページに書かれている設定画面にて、原文の列はA、訳文の列はBという設定で登録した後、2回目の作業では、原文の列がB、訳文の列がAというように設定を変えて行えばいいと思います。
(あるいはExcelの方で、列のカット&ペーストで順番を入れ換えて行うか)

注意点として、Tradosの翻訳メモリの『インポート』機能ではExcelから追加することはできません。

このインポート機能は、Tradosからエクスポートしたファイルに対応していまして、Excelには対応していません。
(例えばTradosの旧バージョンあるいは別の翻訳支援ツールからエクスポートした翻訳メモリとか、第三者から購入した翻訳メモリをインポートする際に使います)

Tradosが使いづらい理由

これは余談ですが、Tradosが使いづらいと言われる主な理由が、使っていてなんとなく分かった気がします。

一言で言うと製品のUIがイケていない。

左側に原文、右側に訳文というデザインだと、原文と訳文の言語の文法上の語順(SVOCとか)が異なる言語の翻訳だと非常にやりづらい、と感じました。
(つまり英語<>日本語の翻訳)

語順が異なるため、どこかのタイミングで分節を切り貼りする工夫が必要になったりします。

語順が同じ言語の翻訳だったら別に問題ないんでしょうが…

今は販売されていない昔のTrados(2007)はこのようなUIではなかったようで、そっちの方が使いやすかったんじゃないかと思います。

しかしTradosの使用を要求する翻訳会社が今でも多い以上、Tradosも無いと困るわけです。

いずれは他の翻訳者がされているように、別の翻訳支援ツールの併用も考えていきたいと思います。

例えば無料の翻訳支援ツールの、OmegaTとか、画面を見る限り、Tradosよりも使いやすそうな気がします。

 

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